ピロリ菌の除菌に失敗したときの心理状態

ピロリ菌という細菌は、比較的最近見つかった菌で、データが少ない細菌のひとつ。

ヘリコバクター・ピロリと言う。

見つかったのは1983年です。



それから、研究が始まって、ピロリ菌がどういうものなのかがしだいに明らかになってきている。

で、今では、このピロリ菌は、結構な悪さをしていることが分かっている。



ピロリ菌がどんな悪さをしているかというと、

とにかく、いろんな胃の不調の原因になっていて、

その中でも、一番気になるのが、『胃がん』の原因ということだ。

胃がんとの関連性ははっきりとしていて、ピロリ菌は胃がんの発ガン物と認められている。

この辺は、肺がんとタバコの関係に似ている。



実際に、胃がん患者の100%がピロリ菌に感染しているという。

つまり、発ガンするかどうかは別としても、ピロリ菌は必ず胃がん発症促進に関係しているといえそうだ。



ピロリ菌に感染していなければ、胃がんになる可能性は限りなく低くなり、ピロリ菌がいなければ、日本から胃がん患者はいなくなるとさえいう関係者もいる。



と、そこまで分かったからには、早速、ピロリ菌に感染しているかどうかを検査して、もし、感染していたら、除菌の治療をするしかない。





ピロリ菌の除菌治療は、他の治療と少しばかり違う点がある。



ピロリ菌除菌は、一回目が失敗したとしても、それでおしまいになるわけではなくて、二回目が用意されている。



だから、まぁ、なんというか、一回目の除菌のときには、余裕があるというか、悲壮感はなくて、気楽な気分で治療ができて、自分は最終的には、除菌が成功すると信じている。



実際に、一回目の除菌の成功率は、70%以上と、結構高い確率で成功するのだ。



ところが、失敗する人も出てくるわけで、

自分は成功すると思っていて、一回目の治療のあと、結果を聞いて、『失敗です』といわれると、あわて始めることになる。



ピロリ菌除菌治療は、治療をすれば、すぐに結果が分かるというものではない。

除菌治療に1週間、その後、およそ一ヶ月は間を空けて、結果を確認するのだ。



成功すると思って除菌治療を行い、一ヶ月もたてば、ピロリ菌のことは忘れかけている。

本人はもうピロリ菌とは縁を切ったと思っている。



ところが、ここで失敗が告げられて初めてイヤーな感じに襲われる。



で、二回目の除菌チャレンジとなる。





ピロリ菌の除菌治療は、必ず成功するわけではない。

最近のピロリ菌は、抗生物質への耐性が強くなっていて、簡単にはなくならない場合があるのだ。

だから、たくさんの抗生物質を経験した患者ほど除菌できにくい。

そして、除菌に失敗すると、この除菌治療のために、ピロリ菌はさらに耐性が付いて強力になってしまう。

最後まで除菌できない人ももちろん居て、そうなると、一生ピロリ菌と付き合うしかないのだ。

このことをよく知っておこう。



はじめから、このことを知っていれば、一回目の時から、除菌治療への取り組み方が違う。



1週間薬を飲み続けるのだが、決められた時間にキチンと飲まなければいけない。

飲み忘れるわけにはいかない。

また、飲酒やその他、治療効果に悪い影響があることはしない。

体調を十分によくしておいて、免疫力を下げないようにする。

など、万全の体制で治療に臨んだほうがよい。





一回目に失敗したとなると、もう最初の余裕はなくなる。

ピロリ菌についても調べはじめたりする。

そして、初めてピロリ菌の怖さを知ることになる。



ピロリ菌保有者 = 胃がん



の構図が頭をよぎるわけだ。





幸い、除菌治療には二回目のチャンスがある。

胃がんのリスクを背負い込みたくはないから、今度は必死になる。





スポーツで言えば、敗者復活戦だ。

ピロリ菌保有者は、敗者復活戦に望む選手たちの気持ち、心理状態を味わうことになる。